東京大学の多様かつ先進的なスポーツ科学研究リソースを活用し、スポーツによる社会の活性化を目指します。
野崎大地
UTSSI機構長/大学院教育学研究科(教育学部)教授
スポーツを行い、楽しむことは心身の健康に良い影響をもたらし、私たちの生活を豊かにします。2016年に設立された東京大学スポーツ先端科学連携研究機構(UTSSI)は、スポーツ科学の研究を通じて、競技力の向上や理解の深化を図りつつ、高齢者や障害者を含む幅広い人々の心身の健康問題に取り組むことをミッションとしています。
スポーツ科学は、身体教育学・生理学・心理学・健康科学・バイオメカニクスなど、多くの研究領域が関わる学際的な分野です。東京大学には各分野の研究者が多く在籍し、活発な研究活動が行われています。UTSSIはこれらの優れた研究リソースを活かし、研究者同士が連携・交流を深めることで、これまでにない高いレベルでスポーツ科学研究を推進することを目指しています。
UTSSIの設立は、近年の技術や科学の飛躍的な進歩と深く関連しています。近年、生理学的・運動学的・心理的データを簡便かつ大量に計測する技術や、ビッグデータ解析技術が大きく進化しています。さらに、脳神経科学における身体運動の制御・学習に関する知見も蓄積され、研究の場が実験室から実践的なフィールドへと広がりつつあります。こうした技術を活用し、選手のパフォーマンス、スキルレベル、体調の変化を多角的なデータに基づいて客観的に評価し、効率的な競技力向上を支援する時代が到来しています。また、こうして得られた技術は、子どもから高齢者、障害者に至るまで、心身の健康を維持するための手段としても広く応用できます。
2024年、UTSSI内には2つの寄附研究部門が設置され、活動の規模と範囲が大きく広がる重要な年となりました。同年9月には「東京大学スポーツコンパス」が制定され、スポーツに関わる教育・研究を通じて、社会的貢献を果たしていくという東京大学の方向性が明確化されました。UTSSIは、民間企業や地方自治体などとも連携を深めつつ、より高度な研究活動を展開し、社会に向けた情報発信を行うとともに、新しい切り口で健康問題に取り組むことのできる有為な人材の輩出にも貢献していきます。

撮影:布川航太